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    2011

01.12

太陽が沈む時、切なく甘い雫が月から堕ちる(002)

 颯太が赤坂の雑踏をすり抜け、日比谷線・神谷町駅へと続く階段を降りようとした瞬間、車道の方から声がかかる。
「ここだ、颯太」
 視線を向けると車道に見慣れた閃のBMWが停車している。
 颯太は「はぁ…」と小さな溜息を漏らして助手席に乗り込んだ。
「わざわざ迎えにきてくれたのか?」
 ぼやくようにそう訊ねると、閃は微笑みながら頷く。
「買い出しで車を出したついでだったからな」
 リアシートには、ごっそりと食材の詰まった紀伊國屋スーパーの買い物袋が無造作に積んである。
(食材の買い物は先に済ませたのか……)
 なんでもやることが素早くて気が利いているのは閃の長所なのだが、まだ午後7時を回ったところで、そんなに遅い時間ではない。
 できることなら紀伊國屋スーパー内を、2人でカートを押しながら買い物をしたかった……と、颯太は思う。
 もちろん、二十五歳にもなった男2人で夕飯の買い物をするのは恥ずかしい行為かもしれないが、閃と颯太は高校生の頃から、そういう付き合いを続けてきている腐れ縁の仲なのだ。
 いつでも、どんな時でも閃と一緒に行動すると颯太は安心できる。
 しかし、閃に対して、『一緒にいたい』とか、どうせなら『誘ってほしい』などという要望は口には出したくない。
 勝ち負けではないのかもしれないが、そんなことを口にしたら負けを認めるみたいではないか。
 それに、普通に考えたら頭がおかしいと思えるほど、既に2人は一緒にいることが多い。
 それなのに、更にそんなことを言うのはヘンだと颯太は思うのだ。
 ―――いくら、そう思っても。

◆2011年1月13日更新分へ続く


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